科学研究費助成事業(平成21-25年度 基盤研究S)
研究課題名「ナノ界面の疲労損傷と破壊」
シリコン(Si)基板上に銅(Cu)薄膜と窒化珪素(SiN)を堆積させた材料から疲労試験片を作製し、疲労実験を実施した。Cu膜に繰返し塑性変形が観察され、それによってCu/Si界面端からき裂が発生し、界面破断に至った。ナノ界面においても疲労破壊は存在することを世界で初めて実証するとともに、開発した手法の有効性を示した。(平成23年度までの成果)
<関連文献(一部)>
“Fatigue Strength of Cu/Si Interface in Nano-Component”
Takashi Sumigawa, Tadashi Murakami, and Takayuki Kitamura
Materials Science and Engineering A, Vol.528, pp.5158-5163 (2011)
“Cu/Si Interface Fracture Due to Fatigue of Cooper Film in Nanometer Scale”
Takashi Sumigawa, Tadashi Murakami, Tetsuya Shishido and Takayuki Kitamura
Materials Science and Engineering A, Vol.527, pp.6518-6523 (2010)
“透過型電子顕微鏡を用いたナノスケール構造体中の塑性領域その場観察試験手法の開発”
澄川 貴志,北川 裕次郎,北村 隆行
日本機械学会論文集A, 第76巻,第772号, pp.1713-1720 (2010)
図1:疲労試験に用いた試験片。シリコン(Si)、20 nm厚さの銅(Cu)薄膜、および、窒化シリコン(SiN)で構成されている。負荷は、堅いSiN層の上面に対して鉛直下向きに与える。
図2: (a)疲労試験より得られた荷重ー時間曲線。設定した荷重幅よりも明らかに小さい荷重で試験片が破断する。(b)試験途中の電子顕微鏡観察像。Si/Cu界面において疲労破壊が生じている。
図3: 疲労試験で得られた荷重ー変位曲線。ヒステリシス挙動を示しており、繰り返し数の増加とともに繰り返し曲線は線形に近づく。降伏応力の低いCuにおける疲労下部構造の発生を示唆している。
図2: 20 nmと200 nm寸法のCuの疲労によるCu/Si界面端からのき裂発生寿命における疲労寿命曲線(S-N曲線)。応力依存性があり、低応力域で寿命が急速に長くなる(マクロ材の疲労破壊との定性的類似)。また、マクロ材より格段に大きい応力で疲労破壊することを明らかにした。